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山田担による沖田総司ポイント その5

前回『山田担による沖田総司ポイント その4』の続きで、今回はついに大本命の沖田総司の淡い恋を描いたエピソードです。

私は自担(山田涼介)が演じていると仮定して読んだら、もうこのエピソードだけで映画一本作れることを確信しました、はい。山田担の皆様はご覚悟あれ。


Episode11『沖田総司の恋』

元治元年(1864年)3月〜

沖田総司ポイント】★★★★★

全ての文章を引用したい気持ちでいっぱいなのですが、それでは意味無いので辛うじてポイントを絞りました。このお話しは大きく分けて五章構成になっているので、その構成ごとに見て行きたいと思います。


◎第一章

(総司が、妙な咳をする)

と土方が気づいたのは、「文久」が「元治」に改元された三月のころからである。(中略)

近藤に話してみた。

「つまり、どういう咳だ」

「さあ。蝶をとってきて、こう、掌に入れて、ぱたぱたさせているような、そんな咳かな」

物語はこんな文章で始まります。「掌の中の蝶のような咳」いかにも土方が思う沖田総司という感じがして天才的な表現だなと。土方の心配をよそに、近藤はこの時点では沖田の咳をあまり心配していないようですね。

この第一章では、沖田総司の生い立ち、近藤・土方との関係が描かれています。例えば、近藤と土方は沖田を実の弟のように思っていたこと。沖田の実姉のお光は婿養子をとって沖田家をついでいるが、その婿は井上源三郎(沖田らと同門で新選組の初期メンバーでもある)の実家から来ていること。つまり、近藤、土方、沖田、井上は何らかのかたちで遠縁近縁の親戚のような感じで「義兄弟」であり、その友情なるものは大変に深かったということが分かります。

総司の姉のお光は、総司が近藤らと共に江戸を出発するとき、まだ幼な顔のぬけない総司が、ひとり家元を離れるのを不安がり、総司にもあらためて手をつかせて、近藤と土方に弟を宜しくと頼みます。

━━━ 総司さん。若先生(近藤)を父、土方さんを兄と思ってお仕えしますように。とお光はさとした。

「いやだなあ」

総司は、頭をかいて照れくさがったが、近藤、土方は大まじめで、

「実の弟以上の気持ちで、お引きうけします」

といった。

ここからも、この3名の繋がりがいかに深いものか、何ならこの3名は運命共同体なのではと思ってしまうくらいの関係性が伺えます。

第一章の最後の方に、沖田総司の人柄が手に取るように分かる部分があるので以下に一部抜粋してこの章を終わります。

何万人に一人という天稟を持って、沖田は生まれついていた。沖田総司にもし欲があれば、一流を樹てることもできたし、江戸で道場の一つも持って門人を取りたてることもできた。

が、この奥州浪人の遺児は、欲というものを置きわすれてこの世にうまれてきたような若者であった。おもしろい話しがある。土方歳三の長兄為次郎というひとは盲人であったために家督を弟嘉六にゆずり、自分は早くから石翠と号して隠居し、素人ばなれした義太夫を在所在所に教えて歩いたり、俳句をつくったり…した世外人だったが、この石翠が沖田を少年のころから可愛いがり、「総司のやつの声をきくと、おらァ、物哀しくなるんだよ」と言い言いした。

━━━ 物哀しい。

といってもべつに陰気な声というわけではない。どちらかといえば、ふわっとした丸味のある、明るすぎるほどの声なのだが、声に、性根のあくがなかった。無欲すぎるのである。


◎第二章

この章は、元治元年(1864年)6月の池田屋斬り込みの際に病状が突如悪化し、その後、単身で医者に診てもらいに行った際にその医者の娘のお悠に淡い恋心を抱くまでが描かれています。

はい、この辺りからもう脳内で変換再生するとエラいことになります。前半は沖田総司の華麗な剣さばきに射抜かれ、後半はピュアな沖田きゅんに胸がギュンッッッとなります。

場面は池田屋の斬り込みから始まります。頁数にすれば2ページ程ですが沖田の剣の腕前が並外れたものである事が十二分に分かります。戦闘の序盤、階下(つまり1階)でたった一人沖田は闘います。ここで、あの有名な「沖田総司の三段突き」が登場するのです。

どん、と足を鳴らして踏みこんだときには腕はのびきり刀は間合を衝いて相手を串刺しにした。沖田の突きは、三段といわれた。たとえ相手がその初動の衝きを払いのけても、沖田の突きは終了せず、そのまま、さらに突き、瞬息、引く。さらに突いた。この動作が一挙動にみえるほど速かった。

逃げる敵を追って、真暗な裏庭にとびおりた沖田は、死体につまずいて転んでしまいます。起き上がったその時、経験したことのない悪寒を覚え、膝から崩れます。

生温かいものが、気管の奥からこみあげてきた。総司は咳きこもうとして、刀を地上に突きたて、体をささえた。

(死ぬ。━━━━)

と思った。

…この先もまるごと引用したいのですが、兎にも角にも沖田はその後、吐血し気を失います。(詳しくは実際に書籍でご確認下さい!)

 

数日、沖田は隊で寝た。喀血のことはだれにもいわず、「あれは返り血ですよ」といってすましていた。隊士の傷手当てについては、討入りの翌早暁に会津藩から外科数人がきて治療したが、総司の体には手傷がない。

周りを心配させまいと見栄を張ってしまう、いかにも沖田総司らしいですよね。この「らしさ」は『燃えよ剣』でも多く出てきますので、そちらでも書ければと思ってます。そして、二時間に及ぶ戦闘で無傷の沖田総司、恐るべし。


その翌日、見舞いにきた会津藩の公用人外島機兵衛が近藤に「沖田はひょっとすると労咳ではないか」と言います。そして、外島は医者に頼んでおくから沖田を通わせたほうがよいのではないかと言い添えます。もちろん、近藤も外島も沖田があの斬り込みの夜の大喀血を知りませんから、まぁ急ぎではないとたかをくくっていました。土方も池田屋の事後処理に忙殺され、沖田を気づかっているゆとりはありませんでした。

 

十日ほど経って気分がよくなったらしく、むくむくおきあがってきてしばらく屯営内を歩いていたが、やがて、ちょっと外へ出るから、と朋輩に言い残して、元気で出た。

━━━どこへ行く。

とは、たれも訊かない。それほど沖田の態度は明るくて、自然だった。

沖田は、屯営を出ると、急に懶(ものう)そうな歩きかたになった。

さて、彼はどこに行くのでしょうか…そう、沖田は医者のところへ行くのです。外島が話しているのをおそらく寝床から聞いていた沖田は、近藤と土方を心配させるのは嫌だと思い、何も言わずに外に出たのです。

そして、病院の門前まで来たは良いものの、人見知りのひどい沖田は入るのをためらってしまいます。その時背後から、娘が「なにか、ご用でございますか」と声をかけます。

ここからがもう、5歳児総司きゅん…「いえ、ち、ちがいます」とあわてて引き返しちゃうんですよ…二十歩ほど引き返して、とまった沖田はまた振り向きます。そうすると先ほどの娘さんがくくっと笑うのです。沖田は、大いそぎで戻って娘さんの前を素通りして門を入ります。しかし、失礼だと思ったのか、あきれている娘さんに「患者です」と当たり前過ぎることを言っちゃうんです。

何コレ…はじめてのおつかい?八百屋の前まで行ったけど、緊張してお店のおばさんに「イチゴ下さい」って言えなくて、走って家に引き返そうとするけどママとの約束を思い出して、意を決して戻ってきたら開口一番「僕はりょうちゃんです」って言っちゃうアレだよね?(混乱)(落ち着け)

娘は微笑してうなずいてくれた。うなずくと、細長なくせに、あごがくくれた。形のいい唇をもっている。

「あの、先生に取りついで頂けませんか。会津藩公用人外島機兵衛どのからお話は通じてもらっていると思いますが。━━私、沖田といいます。あの、総司ですが」

総司ですが。といったとき、沖田は、ぱっと陽が射すように微笑った。なんだか子供のようなひとだ、とお悠はおもい、上眼でうなずいてやった。

恋が…恋が、始まる音がした。司馬遼太郎先生、天才か。顔の全体から唇にフォーカスして、沖田の目線がそう動いたことを暗に示し、そんな自分に無意識に動揺しているであろう沖田きゅんの台詞がまた絶妙にどぎまぎしてますよね。沖田、または沖田総司と名乗れば良かったのに。最後に「あの。総司ですが」が堪らん。更に、追い打ちをかけるように「総司ですが」と言った時の沖田の顔はぱっと明るくなり、あの天使のような微笑みを見せるところまでセットでまさに三段突きされた気分です。


そして、沖田は医者に診察をしてもらいます。医者は沖田のことを会津藩の武士だと思っています。沖田も新選組の者であると言おうとしますが、京での評判があまり良くないことを知っているためそのまま話を合わせます。おそらく、近藤や土方ならすぐに新選組だと名乗ってしまいそうですが、利口なこの青年は自分たちのことを客観視出来ているというところが、また泣ける。

問診の時も、池田屋ではなく、道場での稽古中に吐血したと嘘をつきます。すると医者は…

「あれは、いけない。(中略)どうせ大した素質があるわけではなかろうから、さっさとおやめなさい」

「はあ」

「薬は、差し上げる。しかしかんじんなことは、風通しのいい、直射のささぬところで寝ていることだ。これをまもるなら、薬を差し上げる。守らないなら、むだだ。どうです」

「ええ」

微笑した。守れるはずがない。

「ちゃんと臥ています」

(いい若者だな)

そんな眼を、玄節(医者)はした。

お医者さん、今あなたの目の前にいるのはあの天才剣士沖田総司ですよ…いやぁ無知って怖いです。が、しかし!そう沖田きゅんは良い若者ですよね!わ・か・る!(固い握手)

 

◎第三章

この章は、土方が沖田の異変に気付きはじめます。もしかしたら好きな女性のところへ通っているのではないかと疑いをもった土方は、ある日、沖田が出掛けようとするのを引き留め、どこに行くのかと尋ねます。沖田は「清水寺に紅葉を見に行く」と答えるので、土方はついて行く事にします。

「おれもゆく」

と土方はいって、意地わるく沖田の顔を見た。ありありと狼狽している。土方は、沖田が清水にゆくのではないとみていた。

「さあ、行こうじゃないか」

沖田はやむなく、土方のあとについて壬生の屯営を出た。

もう!お兄ちゃんったら心配なのは分かるけどぉ…。まぁ、お光お姉さんに大事な大事な弟を頼まれてるから仕方ないとは思うけどぉぉ、総司きゅんを困らせないでよぉ(モンペ)

2人は清水の舞台に出て、眼科の美しい自然を眺めます。喜んだ土方は

「京にきてから来るのははじめてだ。お前のうそのおかげだよ」

「うそじゃありませんよ」

沖田は、はえぎわのきれいな太い眉をさげ、やるせなさそうにいった。

「知ってるさ。お前の清水は、もっとお白粉臭えところだろう」

(あ。━━━━━)

と、沖田はうれしそうな顔をした。土方が気づいていないことを知ったのである。

ギュンッッッ…初めは自分の病気のことを疑われているんだと思ってたけど、土方のお兄さんが違う心配をしていた事がわかってホッとしている沖田きゅんがいい子過ぎて辛い。


その後、2人は茶屋でひと休みします。土方が自生の俳句を沖田に聞かせようとすると、何やら沖田は店の外を眺めて自分の話を聞いていません。彼の視線の先には、1人の娘がいました。はい、この娘さんこそ、あの時のお悠です。沖田はお悠が、八のつく日に清水の音羽の滝に水を汲みにいくことを医者で聞き、自分も通っていたんです。でも、滝には行かず、滝が見える茶屋の奥まった先から盗むようにお悠の姿をみていたのです。

沖田きゅんのその性格と美貌なら、そんなことせんでも良いのに、まるで平安時代の垣間見…なんて美しくも儚い恋心なの…尊い

土方のお兄さんは、瞬時に沖田きゅんが、お悠のことが好きだと気付きちょっかいを出し、それに慌てて笑った沖田の声にお悠が気づいてしまいます。

「沖田様。このようなところまでお歩いになっていいのでございましょうか。父は、お寝みになっているように、と申していたはずでございますのに」

(妙だな)

土方は思った。沖田は、近藤や自分の知らないところで、別な生活をもっているようなのである。

「ええ」

顔をまたあからめた。

「たまに、気晴らしだと思いまして」

「いつもは、お寝みでございましょう」

「寝んでおります」

(なにを言ってやがる)

土方は思った。昨日も、自分と巡察に出て(中略)浮浪の士三人を斬ったばかりではないか。

「それならよろしゅうございました。すると、ときどき、この音羽の滝まで、ご気分晴らしにいらっしゃいますの」

「ええ、ときどき」

沖田はしばらくだまっていたが、やがて勇を鼓したような勢いで、

「八の日のこの刻ぐらいにきます」

「━━━」

お悠は、だまった。

ギュンッッッ!山田担の皆さん、これ自担で脳内変換再生してみて下さい…(墓建)

沖田きゅんにとって、ものすごい勇気がいる事だったと思うんです。もしかしたら自分の気持ちが伝わらないかもしれない、もし伝わったとしても医者で会っただけの関係で驚かれてしまうかもしれない。しかも、何か分かんないけどついてきた土方のお兄さんもそばにいますしね!


帰り道、土方は沖田に結核だったのか聞きますが、沖田はきっぱりと違うと答えます。しかし、土方はただの風邪で医者に頻繁に通うのは不自然なことから結核だと確信します。

「なんでも相談してくれないとこまる」

「そうします」

「それとも、あの娘がめあてかね」

「ち、ちがいます。━━━ あんな」

「あんな、なんだ」

「あんないい娘が、私になんぞ、好いてくれるものですか」

カァァァァーー!!もうこの感情は言葉に出来ない。健気や(滝涙)

土方は、沖田にあの娘を嫁に貰えと助言します。沖田は嫌だと断ります。自分は新選組だと医者にすら言っていない、ましてやあのお悠にそんな事を知られたくないと思っているのです。そんな、沖田の気持ちを微塵も理解できない土方は、近藤にある話しを持ち掛けてしまうのです…

 

◎第四章

この章は、土方が近藤に相談して、お悠を沖田のお嫁に貰いにいしゃのところへ行こうとするという章です。まったく、お兄さんは二人して本当に余計なことをやってくれてます。だけど、二人にも悪気は全くないんですよ、寧ろ沖田を想うからこその行動なんですけどね…しかも、これが沖田のいないところで話が進んじゃってるから、可哀想な沖田きゅん…


◎第五章

そして、近藤は医者のところへ出向いて、娘さんを沖田にくれと頼んでしまいます。医者は驚き、丁重に申し出を断ります。

沖田にとっても、このこのは寝耳に水のようなものであった。(中略)

沖田は、半井玄節や、お悠に、この先輩たちのふるまいがはずかしかった。

(もう、半井家には行けない)

冷汗が、背をびっしょりと濡らしている。はずかしいというよりも、もうお兄さんとのこともコレでおしまいだ、と思うと、眼のさきが昏くなる思いだった。

「総司、おきらめろよ」

近藤は、とりなし顔でいっている。かんちがいもはなはだしい、と思った。

「(中略)敵城の娘に惚れたようなものだ。ここは武士らしくあきらめてくれんか」

「ちがうんです」

沖田は必死な顔でいった。(中略)

「いや、ちがうんです。私はただ、あの娘をつまり、遠眼でみているだけでよかったんです。━━━それを」

言おうとしたが、言葉にならなかった。

こうして沖田の儚い恋は終わってしまうのです。なんて神様は意地悪なんだ…沖田きゅんが天使のように美しいから?それとも、そんな純粋な青年が苦しむ姿を見たいから?(ジャニーさんか)

今回ばかりは近藤・土方、許すまじ(真顔)

 

沖田はその後、おそらく一度も女性と縁を持たずに病気が悪化しひとり息を引きとります。『燃えよ剣』のネタバレになってしまうのですが、沖田の最期を描くエピソードのなかに

━━━死ねば。

と総司は考えている。

(たれが香華をあげてくれるのだろう)

妙に気になる。くだらぬことだ、と思いつつ、そういうひとを残しておかなかった自分の人生が、ひどくはかないもののように思えてきた。

とあります。激動の時代の中、兄弟と慕った人を信じて、若くして京にわたり、人を斬り、ひとり死んでゆく…確かに、ここまで儚いという言葉が似合ってしまう人生もそうないのかも知れません。

個人的にはこの「儚さ」が私がアイドルである山田涼介が内包しているまさにそれで、それに気付いてから沖田総司と切り離す事が出来なくなりました。

おそらく、沖田総司も天使のような明るさのなかに一瞬の哀しさを内包しているキャラクターだからこそ、魅力的なんだと思います。だから、この沖田くんの初恋が実らなくて良かった。それが、また沖田くんを強く儚くしていくために必要な要素だと思うから。


原田監督、山田さんでスピンオフ作る時は是非このエピソードも入れて下さい(深々)


いつもの事ながら、最後は脱線してしまいましたが今回はここまで。血風録も残すところあと4エピソードです!

 

【引用】

司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)

 

山田担による沖田総司ポイント その4

前回『山田担による沖田総司ポイント その3』の続きです。

 

Episode08『胡沙笛を吹く武士』

沖田総司ポイント】★☆☆☆☆

胡沙笛とあう尺八に似た音色の笛を吹く隊士鹿内香るの悲劇を描いたこのお話、沖田くん出てきません!以上!

 

Episode09『三条磧乱刃』

沖田総司ポイント】★★★★☆

はい!こちらは沖田きゅん結構いい場面で登場します!新入りの隊士である国枝と新選組六番隊組長井上源三郎にまつわるエピソードです。

まずは、沖田の人物像がわかるこんな場面

平隊士は大広間に詰めこまれている。ここへはめったに患部の連中は顔をみせなかったが、例外は、一番隊組長の沖田総司であった。個室が窮屈らしく、平隊士のごろごろしている広間へよく遊びにきた。

気さくな男だから、たれかれなしに話しかけた。

「沖田先生」

みながそういうと、

「先生はよしてくださいよ」

そんな調子である。新選組きっての天才的な剣士といわれた沖田総司は、まだ二十を二つほど過ぎたばかりで、国枝より若い。

はぁ、私が平隊士だったらもう遠くから眺めているだけで満足。話しかけられでもした時にはもうテンパってよく分からない返事をしちゃう…けど、多分沖田きゅんは優しく笑って返してくれるんだろうなぁ…自担(山田さん)に話しかけられて緊張しちゃうちびっ子Jr.の気持ちが今なら分かる(誰)

国枝は、新入りのため井上源三郎の事が分からず、その見た目から60歳くらいではないか沖田に尋ねます。沖田は弾けるように笑いだし、井上は40代であると教えます。国枝はその事実に驚き、自分の無礼を詫びます。

「いいよ、そう見られた井上のおじさんのほうが悪いんだもの」

沖田は、おじさん、といった。言葉の裏に、骨肉の間柄こような温かさがこもっている。

ここで、補足しますと井上源三郎は近藤・土方・沖田と同じ天然理心流の剣道道場出身で新選組の初期メンバーです。近藤・土方・沖田の大先輩にあたり、彼らに剣の手ほどきをしたのも井上だと言われています。剣の腕前は3人には劣るものの、その実直な性格で黙々と組のために尽くしています。それゆえ、沖田にとって井上はお父さんのような存在だったのかもしれません。この人懐っこさがたまらん。

その後、井上源三郎と国枝が原因(原因と言うほどの事でもないのですが)でひと悶着あり、土方がその事で井上をからかうと、責任感の強い井上は国枝と2人で実力では到底敵わない相手の所へ向かおうとします。沖田はその様子を寝床から見ていました。

沖田総司は、井上が出たあと、外出の支度を調えて、土方の副長室に訪ねた。土方はすでに寝ていた。総司ですよ、と声をかけてから部屋に入り、手燭の灯を行燈にうつした。鎖を着込んだ姿をみて土方がおどろいた。

「なんだ、夜中、その恰好は」

「別にすき好んでやっているわけじゃありませんよ。あなたが悪いんです」

「おれが?」

「井上さんの一件。ああいう物の言いかたをすれば、当人は死勇をふるいますよ」

(中略)

「(井上と国枝の実力では)むりだが、ああいうお人です。しんから隊にわるいことをした。とおもって出かけたのでしょう」

沖田きゅん的には「いけない!大好きなおじさんが危ない!お兄ちゃん(土方)に言わないと…僕も助けに行くんだ!」という感じですかね。私にはそう脳内変換されました。井上おじさんの事が心配で夜も起きて見てたんだよね…なんて良い子なんだ。土方が可愛がるわけだ…。

そして、沖田を初め、新選組は井上らを助けに行きます。そこでの戦闘場面、沖田が出てくるのはほんの一瞬なんですが、それがまた良いんです。夜の闇の中で闘っているので、敵味方の判別が付きにくく、味方を一人斬られてしまいます。そこで…

沖田は呼子を吹いて隊士をさがらせ、あとに残った敵の影を一つずつ数えた。

「十一人」

数えおわってから、味方に動くなと命じ、たった一人で、敵の影をへ突き入った。

うわぁ、これ自分に自信がないと絶対出来ないやつ。一人で闘った方が動きやすくて、敵を仕留められると思ったからこうしたわけでしょ?痺れるぜ…。

 

Episode10『海仙寺党異聞』

沖田総司ポイント】★★★☆☆

詳しいあらすじは省略しますが、沖田のピュアな一面が垣間見えるエピソードです♡

主人公の長坂小十郎はお小夜という女性から相談にのってほしいと手紙を貰います。これは長坂をおびき出すための敵の罠でなのですが…

小十郎は沖田に手紙を書いみせた。沖田はこの問題の背景に、それほど複雑な事象があろうとは、想像もしていない。

「案外なものだな」と、感心した。まだ二十歳を幾つも越していない沖田には、女というものへの憧憬がうせていないようであった。

人を疑わないピュアな沖田きゅん…君はそのままが一番や。

その後、沖田がなにげなく土方にそのことを伝えると、土方は沖田の信じられないほどの人の好さに驚きを隠せません。

「総司、正気かね」

と土方がいった。

沖田は、ちょっとふくれてお小夜の手紙をみせた。(中略)

「どうです」

「馬鹿だなあ。とんだ狐だよ。この手紙のとおりのしおらしい女なら、男を真葛ヶ原のよし幸などによぶものか」

「どういう場所です」

「出逢茶屋じゃないか(中略)一番隊は、組頭も組下も、人の好い馬鹿がそろっている」

「それでは何ですか、土方さん、出逢茶屋を知っている者が利口で、知らない者が馬鹿というわけですか」

「屁理屈をこぎやがる」

沖田に、行ってやれ、とあごでしゃくった。

人が良すぎて土方のお兄さんに馬鹿にされてふくれちゃった沖田きゅん…可愛い。出逢茶屋なんて沖田きゅんは知らなくて良いんです!(モンペ発動)土方のお兄ちゃんもひどいよ…いざ、沖田がそんな所へ行ったら目の色変えて様子を見に行くだろうに。頭の回転が速いから、すかさず屁理屈言っちゃうのもまた愛おしいですよね。


新選組って基本的に暗殺集団で残忍な場面も少なからずあるのですが、土方と沖田の2人の会話のシーンは本当にほっこりするんです。土方が沖田の前では、仔犬のように素になるんですよね…。それをこれまた産まれたばかりの子犬のような沖田が聞いてあげるってのが最高

 

また最後は脱線しましたが、今回はここまで。

次回はいよいよ、自担(山田きゅん)に置き換えるともう瀕死の沖田きゅんの甘酸っぱい恋を描いた作品が登場します!


【引用】

司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)

山田担による沖田総司ポイント その3

前回の『山田担による沖田総司ポイント その2』の続きす。


Episode05『鴨川銭取橋』

慶応2年(1866年)9月28日

沖田総司ポイント】★☆☆☆☆

沖田総司は一瞬しか登場せず、台詞もありません!以上!

物語自体は、新選組五番隊長の座にあった武田観柳斎新選組を抜け、薩摩藩に乗り換えようとするも、土方ら幹部に見抜かれ、銭取橋で斎藤一に斬殺されるというお話です。主人公の武田vs土方・山崎の攻防が楽しめる作品だと思いますので、興味がある方は是非。

 

Episode06『虎徹

文久三年(1863年)〜元治元年(1864年

沖田総司ポイント】★★★☆☆

その名の通り、近藤勇の愛刀「虎徹」について少し皮肉も交えながら描いたお話です。個人的に興奮したポイントは以下に記す一番面。

文久三年の新選組発足当時、近藤は、山南敬助沖田総司らと共に市中巡察に出ます。辺りが暗くなって来たので、近藤は下僕の忠助に提灯に火をつけるよう命じましたがなかなか上手くつきません。近藤らがイライラし始めたその時…

横からのぞいたのは、沖田総司である。気さくな男だから

「よしよし、そこのすし屋で火をもらってきてやる」

と、あたりを見まわした。

惚れた。そんな沖田がやらんでもええのに…しかも、その火の貰い方がまた素敵なんです。

その軒行燈をはずせば用が足りるのだがわ沖田は妙に丁寧な男で、亭主にことわるためにガラリと格子戸をひらいた。

(中略)

「いや、これはおそろいのところ恐縮です。じつは亭主にたのんで提灯の貰い火をしようと思いましてね」

外見もさることながら中身も紳士だなんて、惚れた(2回目)まぁ、たしかに丁寧過ぎるとは思うけど…笑

んでもって、そこのおすし屋さんにいたのが武士5名なんですが、どうやら密議って感じで怪しいなと沖田はおもっていたところ、先方から「何藩だ」と聞かれちゃうんですね

「おどろいたな」

沖田は、笑った

「京では、すし屋に入っても、何藩の何某であると名乗るのですか」

「不審があるからだ」

「いやだなあ」

沖田は、亭主から付木をもらい、その硫黄くさい焔をタモトでかばいながら、

「私は沖田総司新選組副組長助勤」といった。

一瞬、シンとした。が、浪人たちはすぐ色をとりもどして、それぞれが刀をひきよせた。相手は一人だ、とタカをくくったのだろう。

「待った」と沖田はいった。

「店が迷惑する。やらなら表へ出なさい。名乗った以上は、存分にお相手します」

ギャップよ…普段は「〜だなあ」と可愛らしい語尾(これが土方の前だと「〜だなぁ( ◜◡◝ )」になるからもっと可愛い)なのに、名乗った後は一隊士として振る舞う感じが堪らん。けど、口調はいつも通りで穏やかに笑ってるんだろうなぁ。

その後、相手の年頭の武士が他の武士を止め、沖田に軽く頭を下げて無礼を詫びます。

「そうですか」

沖田は、後ろ手で格子戸をあけながら、

「いいんですよ、わかってもらえば。またお会いするときがあるでしょう、あいさつはそのときに」

あくまでも火を貰いに立ち寄っただけですからね。対応もスマートで惚れた(n回目)

惚れたを連呼して終わりました。これ以降、沖田はそこまで登場しませんが近藤さんの人柄が分かって面白いと思います。

 


Episode07『前髪の惚三郎』★★★☆☆

元治元年(1864年)頃?

あらすじは省略しますが、いわゆる衆道(BL)のお話です。ポイントとなる場面ははざっくり分けて2つです。

ポイント①

ある日、土方が沖田を尋ねて一番隊の控え室に足を運ぶ場面。

「沖田君はいるかね」(土方)

この隊の隊長(組長)である。

が、この若者は、一番隊という近藤の親衛隊をあずかる身でありながら、どこか飄々としていて、ほとんど、自室におさまっているということがない。

「さっき、門外に出られたようですが」

(こまった男だ)

土方は外へ出た。

その後、土方は沖田を探しに近くの川の方へ向かいます。すると…

その堀川で、村童が雑魚とりをしていた。川っぷちに、沖田総司がしゃがんでおり、村童たちとしきりにやりとりをしていた。

「総司。━━━」

沖田は、まぶしそうに眼を細めてふりむいた。

「なにをしている。童(わっぱ)に遊んでもらっているのか」

「いやだなあ。こんな子供達に遊んでもらってもちっともおもしろくない」

そのくせ、沖田というこの奇妙な若者は、隊の大人どもと無駄ばなしをしているより、子供と一緒に凧をあげたり、関東の石蹴りをおしえたり、京の「鼻鼻」という遊戯をおしえてもらったりしたあそんでいるほうが、好きらしい。

子供と楽しそうに遊ぶ沖田きゅん、天使。子供達はこの目の前にいる青年が、京を震え上がらせている新選組の主戦力、あの沖田総司だと知ってるいるのでしょうか。この場合、そうか否かは問題じゃないですよね…私が子供なら多分、目の前にいる色白で無垢で優しい笑顔を浮かべるお兄ちゃんを疑う余地もない気がします。(実際に、沖田総司は子供達とよく遊んでくれたというほっこりする史実もあるようです)

余談ですがこの時、沖田は子供たちに小魚を獲ってもらっていました。土方がそれをどうするのかと尋ねると「食べるんです」と答えます。土方は、この小魚を骨まで食べられるように飴煮にしてもらうんだろうと想像します。すでに、沖田の身体の調子が良くないことを知っているのです。

 

その後、土方は本題(加納惚三郎と田代の色恋沙汰について)を切り出します。

「田代と、加納惚三郎のことだが」

「ああ、あの一件か」

沖田は、水面をみながら

「あの一件は、私はにが手ですよ。男がおとこを追っかけるなんて、私にはわからないな」

(中略)

「腕は、どちらができるだろう」(土方)

「加納惚三郎ですよ」

これは、沖田総司は断固といった。沖田のそういう目筋は、近藤や自分でも及ばないことを、土方は知っている。

どうやら、沖田はこの様な色恋沙汰は好きではないようです。こうやって沖田きゅん自身は色恋沙汰とは無縁というか、俗世と離れたところで生きているように描かれていることにわ不思議な魅力を感じます。これについては『燃えよ剣』の方でも書きたい。

それから、剣の腕前を見抜く力はピカイチということも分かって痺れますよねぇ…。

 

ポイント②

物語も終盤、加納は心を通わせていた田代を斬るように命じられます。その際、介添役として土方と沖田がつくことになりました。

「来た」

と、沖田がいった。沖田はこの夜、体でもわるいのか、声に元気がない。というよりは、ほとんど黙りこくっていた。ただひとことだけ、土方に囁いた。

「私は、あのふたり、どちらも嫌いだな、顔を見るのも。そうだな、声をきいてさえ、こう、ぞっとする。土方さんは、どうです」

衆道好きじゃないというか、めちゃくちゃ嫌いじゃん(笑)。いやでも、それで正解!沖田きゅんは汚れちゃいかんのじゃ!(必死)

 

その後、加納は田代を鴨川の四条中洲で討ちます。

土方と沖田は、だまって現場を離れた。草を踏み、やがて砂地を踏み、さらに西の橋を渡りおわったとき、沖田はふと立ち止まった。

「そうだ」

と、この男はつぶやくようにいった。

「用を思い出した。ちょっと中洲までひきかえします。」

この男の用がどういうものか土方にはわかっている。

最初に読んだ時に震えました。屈折した加納の心はその身体と共に、真っ直ぐな狂気を内包した沖田によって葬られる。この話の主人公である加納の結末を間接的に描くからこそ、より深く印象付けられますよね。

そして、最後はこの中では一番人間臭い土方が(化け物め)と桜の若木を切る場面で終わるのです。ここまでセットで最高。土方自身はおそらく加納のことを化け物と表現したのだと思いますが、私には加納と沖田というある意味、人間離れしたアンバランスさを持ち合わせた二人について行けない我々読者を土方がその剣によって代弁してくれるように感じました。


というわけで今回はここまで。

次回は『胡沙笛を吹く武士』『三条磧乱刃』『海仙寺党異聞』くらいまで書きたいなと思ってます。

 

【引用】司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)

山田担による沖田総司ポイント その2

前回『山田担による沖田総司ポイント その1』の続きで、今回は、新選組が発足して約1年が過ぎた元治元年(1864年)の6月におきた2つのエピソードです。

 

Episode03『長州の間者』

元治元年(1864年)6月4日

沖田総司ポイント】★★★☆☆

ポイント①

主人公の深町(長州の間者=スパイ)の入隊考試の際に沖田と立会った場面。深町は沖田に負けはするもののその実力を評価され新選組に入隊することが決まりました。

沖田はその日の夜、土方の部屋にやってきて、

「妙な人間もいたものだ。普通なら、力がなくとも強くみせたがるのが人情だし、竹刀を力いっぱいに打ちあうものだが、あんな人をはじめてみた。わざと弱くみせるというのは、どういう気持ちでしょう」

「だれのことをいっているのか」

「名前は、忘れた」

「らちもない」

「土方さん、今日の人ですよ」

(中略)

「撃ちの浅いのは、あの君の癖ではなく、わざとしてるのではないかな。あの腰、あの太刀行きで、撃ちが浅かろうはずがない。(中略)あれは目録どころか、免許皆伝の腕ですよ」

そう、深町新作が怪しいと最初に気付いたのは沖田なんですねぇ。もちろん実際に剣を交えたという事もあると思いますが、土方にはない、かんの良さや観察眼を持ってる気がしました。だから、いっつも耳寄りなお話を、お兄さんのように慕う土方に知らせたくて、お部屋にあそびに行っちゃうのかなぁ、可愛えぇ…(結局、そこに行きつく)

 


ポイント②

新作が所属している十番隊が出動を命じられた場面、そこに何故か一番隊の沖田があらわれます。

「おれもゆく」

と、門脇からぶらりと加わったのは、沖田総司であった。この男のくせで、草を一本口にくわえて、にちゃにちゃ噛みながらついてきた。

隊長の原田が、いやな顔をした。

「迷惑だな」

「どうして?」

笑っている。

「他人の功を奪うことはない」

「なあに、邪魔はしませんよ。私はただ見物するだけさ」

怖っ…もう沖田に目をつけられたら終わりです。実践で新作の腕がどんなもんか自分の目で確かめようってことですね。付いてくるのが迷惑だと言われて「どうして?」なんて言ってにこにこ笑っているんですよ…更に怖っっ( ◜◡◝ )

でも、実際に自分の目で見て判断するというスタンスは、なんか沖田らしいなぁと…好きだ。

その後、新作が闘っている途中で

「深町君。なにをしている」

背後で、落ちついた声がきこえた。ふりむくと、沖田が薄暗い土間で草を噛んでいる。

はい、怖っっっ…(本日2回目)自分はあくまでも見物人スタンスな沖田。実際、新作が敵を斬ったとき既に沖田は背を向けて、いなくなってます。

 


ポイント③

物語も終盤、新作は新選組の同士(つまり新選組内にひそんでいるもう一人の間者)を斬るように命じられ、その検分役として沖田がつくことになります。その日は祇園会の宵山(お祭り)だった。

「これは、これは」

沖田はうれしそうだった。通りかかる町内ごとに、組立中の鉾や山の内部をのぞきこんでは、声をあげ、舌を鳴らし、子供のように眼をかがやかせるのである。

はい、最高に可愛い沖田きゅんいただきました。サイズ感が3歳児、私ならもうそのまま抱きかかえて迷子にならないように離しませんね。わぁ〜沖田きゅん連れてきて良かったぁ〜(誰)

 


ポイント④

新作は、命じられたとおりに長州の間者である松永主膳を斬ります。しかし…

新作は、主膳の最期をおそらく見とどけることはできなかったろう。主膳を斬ったとたん、どうしたことか、夏雲を見た。さらにのけぞり、鉾の尖端の余りが眼に入った。それらが大きくまわってやがて暗くなったとき、新作の死骸の横で沖田総司が、鉾を無邪気にながめながら丹念に刀をぬぐった。

あぁ…さっきまで子供のように眼をかがやかせていた子が…。しかも司馬先生はここで「無邪気」という表現を使っているのですよ。普通なら祇園会の場面で「無邪気な子供のように」って書いても良いのに、あえてそこでは使わずにここまで持ってきたというのも天才だと思う。人を殺めているのに沖田総司…憎めないんですよねぇ、だってほんとうに無邪気で、一番ファンタジーに近い存在として描かれているですもん。

 

 

Episode04『池田屋異聞』

元治元年(1864年)6月5日

沖田総司ポイント】★★★★☆

ポイント①

いよいよ池田屋に討ち入る場面。5名という少ない人数で討ち入れるのか新選組局長の近藤は思案したのち沖田に尋ねます。

(近藤は)ついに腹心の沖田総司にきいてみた。訊くことによって自分の思案をまとめるつもりだったのだろう。

「さあ、私になんぞわかりませんよ」

沖田は相変わらず透き通るように白い歯並びをみせて、

赤穂浪士の討ち入りは四十六人で、めざす敵はたった一人だった。それからみると五人ではどんなものでしょう」

こんな逼迫した状況でも、平常心というより冷静過ぎる、更には近藤をからかう余裕まで持ち合わせている沖田総司、やはり只者じゃない。

 


ポイント②

そして、近藤はついに討ち入りを決心します。

「諸君、これだけで討ち入る」

「いいでしょう」

沖田はうなずいた。沖田のふだんと変わらぬ子供っぽい微笑が、隊士を奇妙なほど落ちつかせた。

いやぁ痺れる。私が隊士だったら間違いなく惚れるね、もう沖田隊長のその偽りのない言葉をそのまま信じて死にものぐるいで闘う。

 


ポイント③

ズバリ、これは池田屋乱闘の場面です。これは後のエピソードで少し触れたいのと、『燃えよ剣』でも池田屋乱闘の場面があるのでその回でも紹介したいので、今回は割愛しようと思ったのですが、やっぱ少し書きたい…沖田総司、一番多く人を斬ってるんですよ。しかも最初の方は土方の援軍来るまでほぼ1人でワンフロア担当してるんですね(多分)そのくせしてほぼ無傷なんですよ。すぎょい(言葉を失う)

沖田総司を初めこの池田屋異聞、映画ではどんな描かれ方をしているのか楽しみに待ちます。

 

あぁ、この青年は幕末に生まれなければ、こんな乱世のど真ん中にいなければ、人斬りになんかならずにもっと幸せになれただろうに…って読みながら思っちゃう時もあるんです。けど、何だろうな本当に土方さんと近藤さんが好きなんですよね。(地獄でもついて行くって言うくらい)だから、いつも剣を振る時に迷いが全くない。もしかしたら、天性の明るさはもちろん、それが沖田総司を憎めない1つの理由なのかもしれないなと。


最後は少し話がそれてしまいましたが、今日はここまで。

次回は『鴨川銭取橋』『虎徹』『前髪の惚三郎』くらいまで書きたいなと思います。

 

【引用元】

司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)

山田担による沖田総司ポイント その1

長らくはてなブログを更新していませんでした。もちろん、自担(山田涼介)に対する熱は冷めることはなく日々情報収集はしておりましたが自分の感情をアウトプットするエネルギーが残っていませんでした。


が、しかし!映画『燃えよ剣』公開に先立ち、しっかり予習しておきたいと思い本棚を漁り『新選組血風録』『燃えよ剣』を読みはじめたところ「沖田総司」の魅力にノックアウトされ、これは書かねば、書きたい、いや書かせてくれ!という感情に襲われました。


最初に断っておきますが、あくまでも私の脳内では沖田総司=山田涼介が演じている」という前提のもと処理しています。


ただの、ヲタクが勝手に妄想して勝手に胸を躍らせ、独断と偏見MAXで備忘録的に落としていくだけですので、真面目な読書感想文ではございません。苦手な方はUターンして下さいませ( ◜◡◝ )


という事で、マイペースで更新していきます!


まずは『燃えよ剣』と思ったのですが…何せ上下巻二冊にわたり沖田総司ポイントがあり過ぎるので、新選組の短編集『新選組血風録』から一話ごとにポイントを見ていきたいと思います!あらすじ紹介はメインテーマではない為、ほんっっっとうに簡単に(呟く程度の文字数)まとめたものですので、詳しくは書籍で読んでください。

 

Episode01『油小路の決闘』

〜慶応3年(1867年)11月

【簡単なあらすじ】

新選組取調役の篠原が、部下の助太刀に入った際に深手を負った事をきっかけに新選組に対して反骨心を抱くようになり、やがて伊東甲子太郎らと共に脱盟し、油小路で新選組と決闘になる。死をまぬがれた篠原は薩摩屋敷に逃げ、のち官軍東征の時に従事した。


沖田総司ポイント】☆☆☆☆

残念ながら、沖田総司が登場する場面はありません。油小路の決闘自体が1867年である事から既に沖田は病床(結核)にあり第一線での活躍はほぼ無かったということかなと想像しました(知識浅)。強いて挙げるのならば、主人公の篠原と共に闘った服部武雄を「当時、新選組沖田総司よりもまさるといわれた北辰一刀流の使い手」と表したくらい。余談ですが、その服部の戦い様の表現が数行ですが、非常に惹き込まれるものがありました。

 

 

Episode02『芹沢鴨の暗殺』

文久3年(1863年)2月〜文久3年(1863年)9月18日

【簡単なあらすじ】

新徴組(新選組の前身)に応募して京(京都)に上った土方歳三らが、再び江戸へ引き返すように命じられた際に京に留まった隊士が集まり発足したのが新選組である(発足時は近藤派8名と芹沢派5名の計13名と言われている)。初代組長(筆頭)は芹沢鴨であったが、近藤派は芹沢鴨を暗殺した。


沖田総司ポイント】★★★★

新選組の発足と、新選組近藤勇率いる新選組になるまでを描いた重要なこのお話しには沖田きゅんが何度も登場します!(歓喜)


ポイント①

徴募された隊士一同が顔合わせを終え座式で昼食をとった際に土方が芹沢鴨を何者かと尋ねる場面。


「何者だ、あれは。━━━」

小さな声で、横の沖田総司にたずねた。沖田は天然理心流の免許皆伝者で腕は近藤、土方よりも立ったが、年がわかく、しかもふしぎな若者で、どういうときでも明るい童子のような相貌をしている。このときも訊ねられて、

「何者でしょうね」

と、にこにこ笑いながら、

「私はきっと水戸者だとおもうな」

(以下省略)

はい、既に可愛い。まず容姿が「明るい童子」と表現されている青年よ…脳内山田変換メーターがこれだけで故障しました。

剣を握らせたら自分達より遥かに強いのに、普段はにこにこ笑って物腰柔らかにしているなんて、ギャップ萌の最たるもの。十歳ほど離れた近藤や土方が可愛がるのは無理ないわ。

 

 

ポイント②

近藤が芹沢の宿を用意し忘れたつら当てに、芹沢が付近の小屋を叩き潰して薪にし、火をつけた場面。他の隊士一同は万一出火に供えて旅装のまま一睡もしない中…

沖田は二階から往来の火柱をおもしろそうに見物した。

…え?は?

無邪気という言葉で片付けてよいのか。ただハッキリしたのは、沖田が只者ではない事。

山田さんにやらせたらいい顔するんだろうなぁ〜というより既に私の脳内変換メーターでは山田きゅんが口角をあげて呑気に火を眺めています!

この沖田総司には、グラスホッパーの蝉に似た狂気を感じたが、多分真逆なんだろうなと思った。蝉はシジミをみて生を感じる、ある意味普通のマインドを持ってると思う。けど、この沖田総司は悟りを開いているがゆえの狂気というか、この年齢にして常人では辿り着かない所まで辿り着いている狂気みたいなものを感じた。でも、ゾワッとはしない綺麗な狂気という感覚を覚えるのがその掴みどころのない不思議さに繋がるんだろうなと。

 

 

ポイント③

芹沢の大砲騒ぎを、近藤・土方がそれとなく沖田に調べさせ報告する場面。 

沖田はあいかわらず、何が楽しいのかにこにこしている。

「のんきすぎる、というのでしょう。その点は、たしかに芹沢先生がわるいと思っています。(中略)しかし、やり方が、とほうもなく大きいじゃありませんか。私はああいう芹沢先生が好きだな。こそこそおどさずに、白昼、堂々と大砲でおどす。━━」

沖田は、すこし舌の足りない童っぽいものの言いかたで、「私は、大和屋がいけないと思うな。芹沢先生が怒るのはむりはないと思いますよ。(中略)私の好みでは、そういう心の使い方がきらいだな。」

「坊や。━━━」

歳三は、この沖田を可愛いがっている。

はいもう沖田きゅんが言うんだから、大和屋が悪い!そして、そう沖田きゅんは坊やだよね!わ・か・る!(土方さんと固い握手)事実、悪党(バラガキ)と言われた土方とは違い、沖田総司はお育ちが良いのです。

 

こんな風に、土方はよく沖田から色々な情報を手に入れる事も多いです。無駄話(という名の有益な話)をするために土方の部屋によくあそびに行く沖田きゅん、出来る子や。

 


ポイント④

芹沢鴨の暗殺を決めた近藤と土方がその事を沖田に告げる場面。

沖田総司は相変わらず、ふしぎな若者だった。

「芹沢さん、可哀そうだな」

といいながら、この仕事の準備には一番熱心になった。ひどく仕事好きで、凝り性な男なのである。(中略)

「もう大丈夫です。眼をつぶってでも歩けます」

その日を待ちかねている様子だった。

「しかし、芹沢先生は可哀そうだな」

と、この底ぬけに明るい若者は、どこか矛盾していた。その可哀そうだなの口の下からこうものをいうのである。

「土方先生、あなたはずるいから、一ノ太刀はご自分がつけるつもりなのでしょう。そうはいきませんよ。私はこれほど検分しているのだから、私にゆずっていただきます」

出ました、沖田の爽やかな狂気。可哀そうと連呼しながら、芹沢先生のお部屋に何度も遊びに行っては、鴨居の高さや廊下の長さまで検分して最初の一撃を殺らせてくれなんて…なんて奴なんだ。あとは、芹沢先生が寝ごとを言ってるところをこづいたりやっぱり沖田総司は只者じゃない…


それから、この引用だけでは、分からないですが沖田きゅんは芹沢先生にも好かれていたのだろうと。ま、そうだろうね。可愛いもんね。(映画の予告でも伊藤英明さん演じる芹沢鴨に肩を組まれて歩いている身長差最高なカップルみたいなシーンがありましたよね♡そういうシーンじゃない


あくまでも沖田総司ポイント(というより山田さんに演じて貰いたい場面)を掻い摘んでいるので、詳しいストーリーは書籍で確認して頂けたらと思うのですが、暴君のイメージが強い芹沢鴨は意外に話の分かる人物なのかな〜と思ったり…短編ですが読み応えがありました!

個人的にはこの『新選組血風録』の方が『燃えよ剣』の芹沢鴨に関するエピソードよりも細かく描写されている部分もあって、好きかなと思いました。芹沢鴨の最期は『燃えよ剣』では若干違う書かれ方をしているので(何れも沖田が一ノ太刀ですが)、比較しても面白いかもしれません。映画ではどの様に描かれているかも楽しみに待ちたいと思います。

 

というわけで今回はここまで。

映画公開までには書き終わりたいなぁ

 

【引用元】

司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)

Don't forget…

 

同じジャニーズ事務所に所属するグループ、タレントであっても、その在り方は本当にそれぞれだ。

メンバーが1人でも抜けたらそれはグループでは無いと言い切るグループ、メンバーの脱退などを乗り越え、更に力強く活動するグループ、メンバーの休養からの復帰を待ちながら活動するグループ……それぞれがそれぞれの事情を抱えながらも、確固たる信念を持って活動している。そんな彼らがアイドルとして生きている姿は、どんな作り話より現実離れしている真実。


そんなノンフィクションに魅せられ続けて、ある日から私はジャニーズ事務所所属のHey! Say! JUMPメンバーである山田涼介、そしてHey! Say! JUMPというアイドルグループの沼に本格的に踏み込んだ。


そして、Hey! Say! JUMPを全力で応援すると決断したその日は、彼らのアイドル人生に終止符が打たれる時までのカウントダウンをする覚悟を決めた日でもあった。


この日から、コンサートの一つひとつがとても貴重に感じられた。新しいお仕事が来た時や、新しいシングルが出た時の喜びが何倍にもなった。


けれど、慣れとは恐ろしいものでその気持ちも段々薄れていった…2019年1月29日までは(国民的アイドルアイドルグループである嵐さんが活動休止を発表した)。

 

身が引き締まる思いがした。

忘れそうになっていたあの日の覚悟が一気に蘇って来たから。

 

『これからもいろんな世界を見て、可能性を見つける旅をしていきたい。そのためならHey! Say! JUMPというレールから少しくらい外れたっていいと思う。脱退はダメだけど、脱線ならいい(笑)これから何があるかなんてわからないんだから。自由奔放に面白いものを追求するグループでありたいですね。』


圭人が留学発表する数ヶ月前に山田さんはこんな発言をしていた。今のJUMPにとっては、Hey!Say!JUMPというグループは「戻って来る場所、その為に守って行くべき場所」に感じられる。それに拘束されること無く、それを起点に各々が活動するからこそ、1つになった時の結束力が強くなる。そんな関係性。けれど、それは永遠では無い事に大先輩は改めて気付かせてくれた。

 


Don’t forget Jan.10 2013

最高な場所へ君と君とJUMP

全然当たり前なんかじゃない。

体型をはじめ好みや特技…個性バラバラの
9人が同じ目標を共有して、
9人が同じ意識の高さで、
9人がお互いを尊重して、
9人が支えあって、
9人がグループを大切にして、
9人が10年間アイドルとして歩み続けた。

それだけで十分「奇跡」だと思わせて欲しい。

 

デビュー当時、最年長はまだ高校生、最年少に至っては小学生。ジュニアの時に活動していたグループもジュニア歴もバラバラだった。 若すぎるデビューと後ろ指を差される日々。自分達のデビューで周りのジュニアが一致団結しているのが分かった。でも立場上何も言えなかった。実力が伴ってない事くらい自分達が1番分かっていたから。

テレビの露出が少ない中、ひたすらコンサートを行った年、CDを1枚も出せなかった年だってあった。NYCというグループ結成と紅白出場、メンバーの無期限活動休止、山田涼介のソロデビュー、埋まらないコンサート。それでも、諦めずに、辞めずに個々の歌唱力や楽曲演奏、ダンスを磨いて、リスク背負って派閥移動を直訴して、今じゃ揃ったダンスを武器にして。

 

一見、順風満帆でゆとり世代みたいに見えるかもしれないけど、それも思春期から想像を絶するような苦労してるのに、そんなの微塵も感じさせないように歯を食いしばって笑顔でいてくれたから。

その笑顔の裏にどれだけの犠牲があったか、そして周りの優しさがあったか。

 

Hey! Say! JUMPの薮宏太で居てくれて、
Hey! Say! JUMP八乙女光で居てくれて、
Hey! Say! JUMPの伊野尾慧で居てくれて、
Hey! Say! JUMP高木雄也で居てくれて、
Hey! Say! JUMPの有岡大貴で居てくれて、
Hey! Say! JUMP岡本圭人で居てくれて、
Hey! Say! JUMPの中島裕翔で居てくれて、
Hey! Say! JUMPの知念侑李で居てくれて、
Hey! Say! JUMPの山田涼介で居てくれて、
Hey! Say! JUMPというアイドルで居てくれる。

 

私はそれだけで十分だよ。

 

これからも「信頼の貯金」を大切にして、トクベツじゃなくても大切な今日を積み重ねて行って欲しい。本当にそれだけ。

 

10周年おめでとうございます。