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山田担による沖田総司ポイント その2

前回『山田担による沖田総司ポイント その1』の続きで、今回は、新選組が発足して約1年が過ぎた元治元年(1864年)の6月におきた2つのエピソードです。

 

Episode03『長州の間者』

元治元年(1864年)6月4日

沖田総司ポイント】★★★☆☆

ポイント①

主人公の深町(長州の間者=スパイ)の入隊考試の際に沖田と立会った場面。深町は沖田に負けはするもののその実力を評価され新選組に入隊することが決まりました。

沖田はその日の夜、土方の部屋にやってきて、

「妙な人間もいたものだ。普通なら、力がなくとも強くみせたがるのが人情だし、竹刀を力いっぱいに打ちあうものだが、あんな人をはじめてみた。わざと弱くみせるというのは、どういう気持ちでしょう」

「だれのことをいっているのか」

「名前は、忘れた」

「らちもない」

「土方さん、今日の人ですよ」

(中略)

「撃ちの浅いのは、あの君の癖ではなく、わざとしてるのではないかな。あの腰、あの太刀行きで、撃ちが浅かろうはずがない。(中略)あれは目録どころか、免許皆伝の腕ですよ」

そう、深町新作が怪しいと最初に気付いたのは沖田なんですねぇ。もちろん実際に剣を交えたという事もあると思いますが、土方にはない、かんの良さや観察眼を持ってる気がしました。だから、いっつも耳寄りなお話を、お兄さんのように慕う土方に知らせたくて、お部屋にあそびに行っちゃうのかなぁ、可愛えぇ…(結局、そこに行きつく)

 


ポイント②

新作が所属している十番隊が出動を命じられた場面、そこに何故か一番隊の沖田があらわれます。

「おれもゆく」

と、門脇からぶらりと加わったのは、沖田総司であった。この男のくせで、草を一本口にくわえて、にちゃにちゃ噛みながらついてきた。

隊長の原田が、いやな顔をした。

「迷惑だな」

「どうして?」

笑っている。

「他人の功を奪うことはない」

「なあに、邪魔はしませんよ。私はただ見物するだけさ」

怖っ…もう沖田に目をつけられたら終わりです。実践で新作の腕がどんなもんか自分の目で確かめようってことですね。付いてくるのが迷惑だと言われて「どうして?」なんて言ってにこにこ笑っているんですよ…更に怖っっ( ◜◡◝ )

でも、実際に自分の目で見て判断するというスタンスは、なんか沖田らしいなぁと…好きだ。

その後、新作が闘っている途中で

「深町君。なにをしている」

背後で、落ちついた声がきこえた。ふりむくと、沖田が薄暗い土間で草を噛んでいる。

はい、怖っっっ…(本日2回目)自分はあくまでも見物人スタンスな沖田。実際、新作が敵を斬ったとき既に沖田は背を向けて、いなくなってます。

 


ポイント③

物語も終盤、新作は新選組の同士(つまり新選組内にひそんでいるもう一人の間者)を斬るように命じられ、その検分役として沖田がつくことになります。その日は祇園会の宵山(お祭り)だった。

「これは、これは」

沖田はうれしそうだった。通りかかる町内ごとに、組立中の鉾や山の内部をのぞきこんでは、声をあげ、舌を鳴らし、子供のように眼をかがやかせるのである。

はい、最高に可愛い沖田きゅんいただきました。サイズ感が3歳児、私ならもうそのまま抱きかかえて迷子にならないように離しませんね。わぁ〜沖田きゅん連れてきて良かったぁ〜(誰)

 


ポイント④

新作は、命じられたとおりに長州の間者である松永主膳を斬ります。しかし…

新作は、主膳の最期をおそらく見とどけることはできなかったろう。主膳を斬ったとたん、どうしたことか、夏雲を見た。さらにのけぞり、鉾の尖端の余りが眼に入った。それらが大きくまわってやがて暗くなったとき、新作の死骸の横で沖田総司が、鉾を無邪気にながめながら丹念に刀をぬぐった。

あぁ…さっきまで子供のように眼をかがやかせていた子が…。しかも司馬先生はここで「無邪気」という表現を使っているのですよ。普通なら祇園会の場面で「無邪気な子供のように」って書いても良いのに、あえてそこでは使わずにここまで持ってきたというのも天才だと思う。人を殺めているのに沖田総司…憎めないんですよねぇ、だってほんとうに無邪気で、一番ファンタジーに近い存在として描かれているですもん。

 

 

Episode04『池田屋異聞』

元治元年(1864年)6月5日

沖田総司ポイント】★★★★☆

ポイント①

いよいよ池田屋に討ち入る場面。5名という少ない人数で討ち入れるのか新選組局長の近藤は思案したのち沖田に尋ねます。

(近藤は)ついに腹心の沖田総司にきいてみた。訊くことによって自分の思案をまとめるつもりだったのだろう。

「さあ、私になんぞわかりませんよ」

沖田は相変わらず透き通るように白い歯並びをみせて、

赤穂浪士の討ち入りは四十六人で、めざす敵はたった一人だった。それからみると五人ではどんなものでしょう」

こんな逼迫した状況でも、平常心というより冷静過ぎる、更には近藤をからかう余裕まで持ち合わせている沖田総司、やはり只者じゃない。

 


ポイント②

そして、近藤はついに討ち入りを決心します。

「諸君、これだけで討ち入る」

「いいでしょう」

沖田はうなずいた。沖田のふだんと変わらぬ子供っぽい微笑が、隊士を奇妙なほど落ちつかせた。

いやぁ痺れる。私が隊士だったら間違いなく惚れるね、もう沖田隊長のその偽りのない言葉をそのまま信じて死にものぐるいで闘う。

 


ポイント③

ズバリ、これは池田屋乱闘の場面です。これは後のエピソードで少し触れたいのと、『燃えよ剣』でも池田屋乱闘の場面があるのでその回でも紹介したいので、今回は割愛しようと思ったのですが、やっぱ少し書きたい…沖田総司、一番多く人を斬ってるんですよ。しかも最初の方は土方の援軍来るまでほぼ1人でワンフロア担当してるんですね(多分)そのくせしてほぼ無傷なんですよ。すぎょい(言葉を失う)

沖田総司を初めこの池田屋異聞、映画ではどんな描かれ方をしているのか楽しみに待ちます。

 

あぁ、この青年は幕末に生まれなければ、こんな乱世のど真ん中にいなければ、人斬りになんかならずにもっと幸せになれただろうに…って読みながら思っちゃう時もあるんです。けど、何だろうな本当に土方さんと近藤さんが好きなんですよね。(地獄でもついて行くって言うくらい)だから、いつも剣を振る時に迷いが全くない。もしかしたら、天性の明るさはもちろん、それが沖田総司を憎めない1つの理由なのかもしれないなと。


最後は少し話がそれてしまいましたが、今日はここまで。

次回は『鴨川銭取橋』『虎徹』『前髪の惚三郎』くらいまで書きたいなと思います。

 

【引用元】

司馬遼太郎新選組血風録』新装版(角川文庫)